第14話:攻略という名の幻想と、二度目の解禁

【実録】ギャンブル破滅物語:自己破産への軌跡

借金を親のおかげで完済してからの数ヶ月、家の中には穏やかな空気が流れはじめていた。

​休日は家で映画やアニメを見て過ごし、働いて稼いだお金を今まで以上に家に入れた。親も心の傷を抱えながら、少しずつ俺を信じようとしてくれていた。

​だが、俺の脳は死んでいなかった。

​「パチンコは破滅するだけだ。でも、別の方法で稼いで親に恩返しをすればいいんじゃないか?」

そんな、地獄への特急券に等しい「正義感」が芽生えた。

​予想サイトという、新たな「毒薬」

​俺はネットの隅っこで、競馬や競艇の「予想サイト」という存在を知った。

無知で愚かな俺は、本気で信じてしまったのだ。

「予想屋が売っている情報や買い方の指南通りにやれば、確実に儲かるはずだ」と。

​まずは競馬から。予想は数百円の安いものから、数千円の「高額予想」まで。高い予想ほど当たる気がした。実際、たまには当たる。だがそれは、下手な鉄砲を数撃てばいつかは当たるという、ただの確率の問題でしかなかった。競馬はこのやり方ではなかなかうまくいかない、と割と早くに気づいた。

​焦った俺が次に目をつけたのは、競艇だった。

「6艇しかない。競馬より圧倒的に当たりやすいじゃないか」

そんな単純な理由で、俺は競馬から競艇の有料予想を買い漁ることにシフトした。

これは遊びじゃない。ビジネスだ。攻略なんだ。

俺は自分にそう言い聞かせ、再び泥沼に足を踏み入れた。

​「勝つため」という、最悪の免罪符

​競艇の予想を買うには金がいる。舟券を買うのにも、まとまった金がいる。

だが、俺の給料は親に渡すために消え、手元に残る自由な金はわずかだった。

​「給料だけでは、勝負の土俵にすら立てない……」

​その時、封印していたはずのあの記憶が、鮮やかに蘇った。

スマホひとつで、こっそりと、すぐに金が手に入る、あの感覚。

​「でも、大丈夫。今回はパチンコみたいに闇雲に打つわけじゃない。予想屋の予想で『攻略』するんだから、すぐに返せる」

​震える指で再び消費者金融のサイトを開くと、親のおかげで形ばかりの借金完済をした俺は、総量規制もリセットされ「優良顧客」として、あっけなく迎え入れられた。

​審査通過。入金完了。

一度地獄を見たはずの俺の口座に、再び「毒」が流れ込んだ。

​壊れた羅針盤

​「今回は勝つ」

その言葉は、俺にとって絶対の真理だった。

​予想に丸ノリし、大金を投じる。勝てば親に恩返しできる。負けたら、取り戻すためにさらに精度の高い予想を買って取り返せばいい。パチンコ屋の液晶に釘付けになっていた頃よりも、俺の思考は冷酷に、そして確実に狂っていた。

「攻略」という言葉が、借金への罪悪感を完全に消し去っていた。

​孤独な部屋で、競艇のレース結果を見つめる日々が再び始まった。

親が守ってくれた「ゼロ」の地点から、数ヶ月。

​あれほどまでの地獄を見たにも関わらず、たった数ヶ月の後、俺は自ら、さらに深い奈落へと飛び込もうとしていた。

​今度は「勝てる」という、呪いのような確信を抱きしめたまま。

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