第27話:最後の審判と、空っぽの「更生」

【実録】ギャンブル破滅物語:自己破産への軌跡

​紅葉が散り、冬の気配が肌を刺す頃。俺は地方裁判所の門をくぐった。

​かつて、ただの大学生だったあの頃の俺。スロットやパチンコの眩い光に、純粋に目を輝かせていた俺。

無垢にホールの椅子に座っていた自分が、まさか後に法廷の椅子に座り、まるで被告人のように審判を受けることになるとは。

​遊びのつもりで追いかけた光から始まり、様々なギャンブルに身を投じた結果、いつしか自分を裁く「場所」へと導かれた。その人生の皮肉を感じずにはいられなかった。

案内に従って会場の近くまで行くと、名簿用紙が置いてあった。必要事項を記入し、冷たいベンチで待つ。やがて現れた弁護士と短く挨拶を交わし、俺たちは法廷へと入った。

​人生で初めての裁判所。俺はこれから始まる「債権者集会」と「免責審尋」に、激しく緊張していた。

債権者集会は文字通り、金を貸した側が集まり、俺の財産状況や破産の経緯を管財人から聞く場である。「怒鳴られるんじゃないか」「罵倒されるんじゃないか」……そんな不安が頭をよぎる。

​しかし、債権者の席に誰かが来ることはなかった。

その空白の座席を見て、俺は少しだけホッとしていた。

​「事件」と呼ばれた、泥沼の日々

​裁判官と管財人が入室し、厳かな空気の中で手続きが始まる。

債権者が不在の債権者集会はすぐに終わり、そのまま引き続き「免責審尋」が始まった。

​「本事件について……」

​裁判官の口から発せられた「事件」という単語が、妙に耳に残った。

借金、嘘、ギャンブル、そして死の淵を彷徨った日々。俺が必死に、あるいは自暴自棄に駆け抜けてきた泥沼の時間は、法律の世界では無機質な「事件番号」として処理されていく。

俺の人生の失敗は、ただの書類の一部になったのだ。

​免責審尋もまた、驚くほど呆気なく終わった。

ネットの体験談を読んであれほど身構えていたのに、質問攻めに合うことも、罵倒されることもなかった。弁護士と管財人が短く言葉を交わしただけで、俺が口を開く場面すらなかった。あまりの呆気なさに、「これで終わりなのか」と拍子抜けしたほどだった。

​550万円の消滅と、重い「自由」

​裁判所を出た後、乾いた冬の風の中で弁護士が言った。

「まあ、問題なく免責は下りると思います」

​その言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けていくのを感じた。

(これで、終わったのか……)

​550万円という、自分一人の力では返せなかったであろう負債が、公的な力によって「無」に帰される。債権者の方々には申し訳ないという言葉すら届かないが、それでも、喉元を締め付けていた鎖が外れた解放感だけは本物だった。

​「ただ、少なくとも今後数年はカードもローンも使えません」

「二度目は難しいです。そうならないためにも、生活を根本から立て直してください」

​釘を刺す彼の言葉に、俺は「はい、ありがとうございました」と小さく答えるのが精一杯だった。

感謝、安堵、そして消えない後ろめたさ。それらを抱えたまま、俺は裁判所を後にした。

​2度目の、ゼロからのリスタート

​こうして、俺の2度目の「ギャンブルによる破滅」は、法的に終止符を打たれた。

だが、借金がゼロになったからといって、脳に刻まれた依存の回路が消えるわけではない。

​二度も裏切り、借金地獄を見せた両親に負わせたトラウマ。そして、ギャンブルで身を滅ぼしたという事実。

それは一生消えることのない、俺の「罪」となった。

​この消えない罪と、鳴り止まない衝動を抱えたまま、俺の人生はこれからも続いていく。

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