第15話:机上の必勝法と、連敗の闇

【実録】ギャンブル破滅物語:自己破産への軌跡

​​

競艇にのめり込む中、俺はある「必勝法」に辿り着いた。「ココモ法」だ。

※ココモ法: 前々回と前回の賭け金を足した額を次に投じる手法。連敗するほど的中時の利益は膨らむが、その分、一度の不的中が招く「次回の賭け金」も雪だるま式に増えていく。

​「資金が無限にあれば」理論上は負けない。だが当然、俺の資金は無限ではない。連敗すれば、賭け金は一気に膨れ上がり、一瞬でパンクする。

​そんな危うい手法を「過去のデータ」に基づき、自信満々に推奨する予想家に出会ってしまった。そして、その手法を『完璧なロジック』だと心酔し、俺自身がそれを選び取ったことが、二度目の終わりの始まりだった。

​自動購入プログラムという「最強の環境」

​「この人は信用できる」

リーズナブルな予想価格、公開された実績。俺は確信し、借金してハイスペックなノートパソコンを購入した。有意義な先行投資だと信じてやまなかった。

​有志が作った自動購入プログラムを走らせれば、仕事中であってもシステムが勝手にレースを絞り込み、ココモ法に則って舟券を買ってくれる。

パソコンが勝手に金を稼いでくれる、最強の不労所得環境が整った――。

​最初のうちは、少額ながら着実に利益が出た。

「ようやくたどり着いた…これで親に恩返しができる…!」

本気でそう思っていた。

​牙を剥く「理論上の負けなし」

​ところがある休日、歯車が狂い出した。

その日もいくら勝てるかワクワクしながら、のんびりパソコンの前でレース観戦しようとお気楽だった。しかし、高確率で当たるはずのレースが次々と外れる。

​4連敗、5連敗……徐々に焦燥感が募る。だが、システムは無慈悲に次の賭け金を跳ね上げる。

​俺はスタートの金額を高く設定しすぎていた。10レース近く外れ続けた時、賭け金の総額は、すでに10万円を超えていた。俺の資金と精神は限界に達していた。次の賭け金は1レースで……90,000円近くになっていた。

​「ふざけんなマジで!当たんねーじゃねーか!」

予想屋や選手を罵倒しながら、俺は「このまま当たらないかもしれない恐怖」に耐えていた。

​行くも地獄、止めるも地獄。ここで辞めたら負け確定。だが当たれば……。

嫌な予感しかしない。だが、祈るしかない。ここでは止まれないのだ。

​「頼む……1回でいい、当たってくれ……!」

​だが、現実はあまりに非情で冷酷だった。

「こい!!!こいいいいいい!!!!!」

狂気の咆哮も虚しく、第1ターンマーク、予想に反する艇が先頭に躍り出る。

​無理だ……終わった……。

パソコンの前で崩れ落ちた。一日で20万円以上を失った。

​凍りついた掲示板

​悲劇はそこでは終わらなかった。

大敗した翌日、俺は競艇をする気にもならなかったが、後から確認すると、翌日はもし予想通りに賭けていればプラス収支で終わっていたようだった。

​「たまたま、あの時だけ不運が起きただけだ。手法は間違っていない。大丈夫だ」

そう自分に言い聞かせ、翌々日、再びプログラムを仕込んでから仕事に出た。

​仕事中、腹痛を装いトイレに駆け込んでレース結果を確認する。

「あ……れ……? なんで……なんで!?」

気づけばまた10レース近く負け続けていた。頻繁にトイレに駆け込む俺を訝しく見る他社員をよそに、俺の気はレース結果だけに向けられていた。

​ここを外したら大敗確定。恐る恐る見た最後の結果は……

​「当然」、外れていた。

「当然」、なのである。得てしてこういうときは当たらない。悪魔の手のひらで踊らされているのではないかと錯覚するくらい、不思議なほど当たらない。

先日の傷も癒えないうちに、俺はさらに10万円以上を失った。

​その予想家を信じて情報を買った連中が集うコメント欄は、異様なほど静まり返っていた。当たった時はあんなに盛り上がっていたのに、今は誰も、何も書き込まない。

怒り、絶望、虚脱。画面の向こう側にいる見知らぬ同志たちの、声にならない悲鳴が聞こえるようだった。

​俺はといえば、完全に脱力し、よろよろと上の空で仕事に戻った。

もう止められない。大敗に次ぐ大敗に、俺のブレーキは壊れ始めていた。

​「絶対に取り返す…!」

​失った金を取り戻すために、俺はまた別の「予想」を求めてネットの闇を彷徨い始めた。

ブレーキの壊れたダンプカーが、さらに加速して崖っぷちへ向かっていく。

あの完済からわずかな期間で、俺の人生はまたバラバラに砕け散ろうとしていた。

← 前の話へ   |   次の話へ →

タイトルとURLをコピーしました