​第12話:夏の日差しと、借金の告白

【実録】ギャンブル破滅物語:自己破産への軌跡

「借金がある」

伝えなければならない。そう思いながらも、俺は喉の奥まで出かかった言葉を、何度も血を吐くような思いで飲み込み続けていた。

​家族にとっては、何も変わらない日常が流れる日々。

なかなか言い出せず悶々としていた休みの前日の夕食時、父が明るく誘ってきた。

​「明日、3人で釣りに行こう」

​母が作った温かい料理。テレビから流れる日常の音。

胸が詰まりそうになりながら、俺は「うん、いいよ、行こう」と心なく答えるのが精一杯だった。

​楽しそうに笑う二人の顔が、正視できない。

この幸せな空気を近い内に「木っ端微塵」にぶち壊すのは、他でもない俺なのだ。

この日も、言えなかった。せめて今だけでも、二人の笑顔を壊したくなかった。

​眩しすぎる海と、届かない謝罪

​翌日、3人で海へ向かった。

俺の暗い心とは裏腹に、空はからっと晴れ渡り、夏の日差しが容赦なく降り注いでいた。

​何も知らない父と母。久しぶりの家族での釣り。

二人はそんな穏やかな時間を心から楽しんでいた。その屈託のない笑顔を見ていると、情けなさと申し訳なさで、涙がこみ上げてきそうになる。

​なぜだか分からないが、普段はほとんど写真を撮らない俺が、こっそり二人の姿をスマホのカメラに収めた。

確実に今のままではいられない――そんな修羅場の訪れを予感して、無意識に「今の二人」を留めておきたくなったのかもしれない。

​(ごめん、本当にごめん……)

​笑顔の二人の写真を見て、さらに溢れそうになる感情を殺しながら、心の中で何度も繰り返した。だが、その声は虚しく波音にかき消されていった。

俺はその日、いよいよ言わなきゃならないと、地獄へ向かう決意を固めた。

​決戦の夜、「250万」の衝撃

​その日の夜だったか、あるいは数日後のことだったか。

夕食の席で、俺はついに「話がある」と切り出した。

​あまりに神妙な俺の様子に、異変を感じたのだろう。父が心配そうな顔で聞いてきた。

「いい話か、悪い話か……?」

​「悪い話だよ……後で、二人で部屋に来てほしい」

「えー、なんなのよー?」

​不安げに俺を見つめる二人をよそに、俺は味のしない夕食をそそくさと終え、自室に逃げ込んだ。

​しばらくして、母が部屋にやってきた。

逃げ場はない。俺は震える声で、ためらい続けたその一言を絞り出した。

​「実は……借金がある」

​「ええっ!? いくら!?」

​「……250万くらい」

​「ええーーっ!!!?」

​母の悲鳴と驚愕が混ざった叫び声が、家中に響き渡った。

まだ離れた場所にいた父に向かって、母が裏返った声で叫ぶ。

​「借金があるんだって! 250万だって!!」

「ええっ!? いくらだって!!?」

​地獄の時間の始まり

​そこからは、文字通り地獄の時間だった。

俺を待っていたのは、これまで聞いたこともないような両親の怒号と、罵詈雑言の嵐だった。

​「何に使ったんだ!」

「あんなに自由にさせてやったのに!」

「あの時、こうしておけばよかったのに……!」

​怒り、失望、そして後悔。

二人がぶつけてくる言葉の数々が、鋭いナイフのように俺の体を切り刻んでいく。

​もちろん自業自得だ。ただただ俺が悪い。どれだけ罵倒されても文句は言えない。

それでも、めちゃくちゃに言われ続ける時間は、俺にとっても耐え難いほど辛かった。俺だって、なりたくてこんな依存症になったわけじゃない。あの時間は、もう二度と思い出したくもない。

だが、一番の地獄を味わっていたのは、信じていた息子に裏切られた両親の方だったに違いない。

​「250万円」

​「うちの息子に限って、そんな馬鹿な真似はしないだろう」

そんな根拠のない、けれど温かい信頼を、二人は無意識に抱いていたはずだ。

その信頼を粉々に打ち砕いたその数字は、俺の大切な家族を、一瞬にして地獄へと叩き落としたのだ。

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