小学校の頃の俺は、自分で言うのもなんだが、かなり明るい性格だった。
将来の夢はお笑い芸人。学芸会の演劇では目立つ役に自分から立候補し、実行委員にも入るようなタイプ。
成績も良く、親の期待もそれなりに高かったんじゃないかと今になって思う。
だが、中学に入ると、周りのレベルが一気に上がった。
勉強は「凡人の中のちょい上位」程度に落ち着き、元々ダメだったスポーツはさらにダメになった。
それでも当時の俺はまだ無垢だった。見学した時にカッコよかったという理由だけで運動部に入り、練習に明け暮れた。練習がキツくてたまに後悔しながらも、
「卒業したら、高校では絶対に緩い部活に入る」
それだけを心に誓って、三年間を耐え抜いた。
地方の進学校と、ネットゲームの熱
高校は、中学時代に嫌々塾通いさせられつつもそれなりに勉強し、地元の進学校に入った。
部活は宣言通り、PC部という名の帰宅部。
そこで自分のパソコンを手に入れたのが、すべてを狂わせる始まりだったのかもしれない。
俺はネットゲームにどっぷりとハマった。
別に現実逃避をしたかったわけじゃない。ただ、友人と夜中までチャットを飛ばし、ゲームをするのが純粋に楽しかった。
隠れて買った、自分だけのパソコン
勉強を適当に流すようになったせいで、成績はどんどん落ちた。
だが、楽しさに比例して、生活のバランスは確実に崩れていった。
ちなみに学校には普通に通っていたし、オタク気質の友人だけでなく、いわゆるカースト上位の奴らとも普通に話せた。学校で居場所がないなんてことはなかった。
赤点を取って補習を受けることも珍しくなくなり、ついに親がブチギレた。
「パソコン使用禁止」
それが、親の下した断罪だった。
普通ならここで諦めるか、反省するだろう。
だが、当時の俺には、使い道のなかった小遣いがそこそこ貯まっていた。
俺はその金で、親に内緒で、こっそり自分用のパソコンを買い直した。
親の目を盗み、段ボールを部屋へ運び込む時のあの心臓のバクバク。
「悪いことをしている」という背徳感さえ、当時の俺には最高のスパイスだった。
もちろん、成績は悪化する一方だったので詰められてすぐにバレてまた烈火のごとく怒られた。
「あのあたりから、あんたはおかしくなりだした」
親は今でも、当時の俺を振り返ってそう言う。
確かに、そうかもしれない。
ネットゲームの世界は、努力(時間)をかければかけるほど、目に見える「報酬」や「数字」が返ってくる。
深夜、静まり返った部屋でクリック音だけが響く中、数パーセントの確率でしか出ない「レアアイテム」を引き当てた瞬間の、脳が焼けるような高揚感。
親の目を盗んでまで自分の欲求を突き通そうとする、あの異常な執着心。
その「快楽への執着」と「報酬への渇望」は、形を変えればそのまま、ギャンブル依存の土壌そのものだったのだ。
導火線の火は、もうすぐそこまで迫っていた。

